松原正樹(まつばら まさき)とは、福井県越前市(旧武生市)出身のギタリストで、アレンジャー、セッション・ミュージシャンでもある。
ヤマハ・ネム音楽院(現・ヤマハ音楽院)出身でキャンディーズ、松任谷由実や松田聖子、さだまさしなど他多数レコーディング参加・共演経験を持つ日本の代表的なエレキギター奏者の一人。
セッション・ミュージシャンでキーボーディスト、作曲家の南部昌江は妻であり、彼のアルバムに良く参加している。
2016年2月8日未明に末期癌のため死去(61歳)されました。
1.概要 †
祖父が地元でダンスホールを開業。父の代まで続き音楽には事欠かない環境で育ち自然と音楽への興味が沸く。学生時代にブラスバンドに入るも興味は一気にギターへ移りバンドを結成。一人プロを目指し上京。
1974年にハイ・ファイ・セットのバックバンドとして高橋ゲタ夫・新川博と「ガルボジン」結成し、全国ツアー、TV出演等約2年間活動。同じ頃、上田正樹のプッシュ&プルにも加わり活動。
当時の歌番組は生演奏だったので、ギター・プレイを聞いたレコード会社のプロデューサー達にレコーディングに呼ばれるようになる。その後、スタジオワークを中心に、数多くのレコーディングセッションに参加してきた。
そのセッション活動の幅は、松任谷由実、松山千春、さだまさし、辛島美登里、徳永英明、岡村孝子、永井真理子等、シンガーソングライターから、アイドル系のキャンディーズ、松田聖子、中森明菜、小泉 今日子、光GENJI等をはじめ、日本のアーティストの殆どに関わると言っても過言ではなく、現在までにレコーディングに参加した曲は、優に一万曲を超えると言われる。
『音楽はスポーツだ』をキャッチフレーズに、当初7人(林立夫、斎藤ノブ、マイク・ダン、松原正樹、今剛、安藤芳彦、小林泉美)のミュージシャンによって1979年にパラシュートを結成する。
が、これまでキャンディーズのレコーディングに参加していたメンバー(林立夫、斎藤ノブ、松原正樹 等)が多いことから、キャンディーズへのお別れメッセージソング「Bye Bye キャンディーズ(キャニオン C-84)」を78年1月にパラシュートのグループ名でリリースした。
しかしこれは、単に「お別れ」としての意味だけでなく、穂口氏の言われるようにプロのスタジオミュージシャンがキャンディーズをアイドルとしてではなく、ミュージシャンとして扱い、認めていた事も意味している。
また、松原正樹は「微笑がえし」のレコーディングにもギターで参加している。
2ndアルバムでは小林泉美が脱退し6人となったが、そのアルバムにゲストミュージシャンとして参加した井上鑑がその後正式メンバーとして加入する。
3rdアルバム「HAERE MAI」は当初2枚組の予定で録音が開始されたが、レコード会社との意見の食い違いで1枚で発売され収録時間の関係で短くカットされた曲がある。また、同アルバム収録の「カクテルナイト」はメンバー内では「シングルカットして歌番組にも出たい」という意向もあったが、「バンドのイメージと違う」というレコード会社側との意見の対立により流れたと当時のファンクラブ会報に掲載されていた。
その後、海外録音の4thアルバム「Sylvia」の発売後しばらくして活動を停止。正式な解散宣言は無いままだったが、2003年5月のイベント「CROSSOVER JAPAN '03」にて一度限りの再結成が行われた。
1988年には、高尾直樹とバンド「TRIFORCE」を結成している。
ソロ活動としては1978年にデビュー・アルバムを出して活動。生演奏にこだわったHUMARHYTHMシリーズは好評である。
他に、自身の参加・結成したスタジオミュージシャン・バンドとして、「上田正樹とPush & Pull」「AKA-GUY」などが有名。
スタジオミュージシャンとして超多忙だった80年代の始め頃より自宅にレコーディングスタジオを持ち、音楽に関わる様々な機材や録音のノウハウにも、積極的に取り組んできた。
心に届く音作りをいつも心掛け、最近では他のアーティストのサウンドプロデュースなども積極的に行っていたが、2015年5月、十二指腸がんが判明。6月に開腹手術をしたもののすでに手の施しようがなかった。
その後、栃木県内の病院に入院し、緩和治療を受けてきたが2016年2月8日未明に死去(61歳)されました。
2.使用機材 †
松原正樹のギターテクニックは当初から定評があり、当時のナマ歌番組におけるギター・プレイを聞いたレコード会社のプロデューサー達に引っ張られ数多くのレコーディングセッションに参加することになるが、ギターテクニックだけでなく、彼が生み出すギターサウンドそのものにもファンや音楽関係者の注目を浴びることとなる。
とりわけ、そのサウンドの表現手法としてのエフェクターについてプレイヤーは個々様々な機材を使用するが、アマチュアプレイヤーもプロが使用する機材について注目するようになった。
78〜80年頃、エフェクターボードという概念がまだあまり一般的ではなかった時代にYAMAHAからSB-200というエフェクターボードが発売された。
しかし松原氏はエフェクターボードという概念の一歩も二歩も先を行くエフェクターシステムというものを、その時代のギタリストに先んじて具現化していた。
エイヅカ・エンジニリング・ワークショップ(EEW)製特注第1弾のエフェクターシステムで、松原氏所有のエフェクターとパッチング、EEW特注開発回路をアルミトランクに内臓し、フットスイッチによりエフェクターのプリセットセレクトをリモートコントロール可能としたシステムであった。
このシステムに組み込んだ内臓エフェクターは
マイクロシンセサイザー (エレクトロハーモニクス製)
1.オーバードライブ (BOSS製)
2.ダイナコンプ (MXR製)
3.フェイズ100 (MXR製)
4.アナログディレイ (MXR製)
5.TC-X II フェィザー (TCエレクトロニクス製)
6.ミュートロンIII (ミュージトロニクス製)
7.10バンドイコライザー (ROSS製)
8.フランジャー (グヤトーン製)
9.エンベロープ・モディファイヤー (マエストロ製)
10.コーラスアンサンブルCE-1 (BOSS製)
11.ステレオノイズゲート (EEW製)
となっていて、年代的にこのエフェクターシステムの製作が間に合ったか微妙なところではあるが、少なくとも松原氏所有のエフェクター(1〜10)を使用して「微笑がえし」のレコーディングをしたのは確実とみられる。
このエフェクターシステムの成功により渡辺香津美、高中正義、芳野藤丸(ショーグン)、矢萩秀明(メルティングポット)といったトップギタリスト達も次々とシステム化していった。
後に、この松原システムが音楽雑誌に紹介されてからアマチュアを含め、一般的にエフェクターシステムという概念が定着するようになった。
また高中正義のC-MOSロジック・プログラムセレクトエフェクターシステムは当時としては驚異的で、後のプログラムエフェクターシステムに影響を与えた。
現在の松原氏のエフェクターシステムは見た目にはボード直付けのようだが、フットスイッチ及びセレクターコントロール部においてコンパクトになった分、システム的には更に進んだものになっているようだ。
3.ディスコグラフィー †
●ソロ
ジャケット | タイトル | 発売年 | レーベル | レコード番号 |
| 流宇夢サンド | 1978.07 | bounce | bounce-0004 |
| Take A Song | 1979.05 | Victor | SJX-20131 |
| SNIPER | 1983.01 | PONY CANYON | PCCY-1605 |
| Painted Woman | 1983.11 | PONY CANYON | PCCY-1606 |
| BEEN | 1985.06 | PONY CANYON | PCCY-1607 |
| STORIES | 1987.11 | PONY CANYON | PCCY-1608 |
| 流宇夢サンド '95 | 1995.07 | bounce | bounce-0003 |
| TENDER HEART | 2000.04 | aosis | VICL-69011 |
| ROAD MOVIE | 2000.10 | aosis | VICL-69022 |
| All-n-All | 2001.10 | aosis | VICL-69062 |
| The Guitar Bros. with 今剛 sittin'in | 2003.06 | aosis | VICL-69096 |
| Acoustic Age | 2004.10 | aosis | VICL-69118 |
| HUMARHYTHM I | 2000.03 | Rocking Chair | RCMT-1001 |
| HUMARHYTHM II | 2002.10 | Rocking Chair | RCM-1002 |
| HUMARHYTHM LIVE | 2003.05 | Rocking Chair | RCM-1003/4 |
| HUMARHYTHM III | 2004.10 | Rocking Chair | QRCJ-1005 |
| LIVE 1990-94 /TRIFORCE | 2005.04 | Rocking Chair | QRCJ-1006 |
| Life-Forever /TRIFORCE | 2005.04 | Rocking Chair | QRCJ-1007 |
| GUITAR TALKS | 2005.04 | Rocking Chair | QRCJ-1008 |
| TAKE A SONG | 2008.11 | | QRCJ-1014 |
| HUMARHYTHM V | 2008.11 | | QRCJ-1015 |
| SEVEN SEAS CRUISE | 2008 | | NCS-603 |
| HUMARHYTHM IV /4ROCKAMBOS | 2006.06 | Rocking Chair | QRCJ-1010 |
●パラシュート
ジャケット | タイトル | 発売年 | レーベル | レコード番号 |
| from ASIAN PORT | 1980.04 | PONY CANYON | PCCY-1601 |
| 6 kinds 6 sizes | 1980.12 | PONY CANYON | PCCY-1602 |
| HAERE MAI | 1981.06 | PONY CANYON | PCCY-1603 |
| Sylvia | 1982.05 | PONY CANYON | PCCY-1604 |
4.出典、参考文献 †
・wikipedia
・松原正樹HP
・松原正樹さんライブ 突撃機材リポート!
・aosis records
・ロッキンf別冊 エフェクター自作&操作術 ミュージックマシン・ハンドクラフトブック 昭和57年3月発行 (09750-3)
・現実となったビジョン 穂口雄右